主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
泣きは生得的な愛着行動である一方,発達に従って,人は泣きを抑制するようになる。泣きの抑制には,泣きたいという動機をもちつつも泣くことが困難な状態があり,これは非適応的側面を有している可能性がある。本研究では,泣き行動,泣きに対する動機づけ,それらに発達初期から影響を与えると考えられる愛着傾向と感情抑制傾向の関係を明らかにし,泣きの抑制を規定する要因について検討した。成人の学生201名に対しweb上で質問紙調査を行った。用いた質問紙はACI-B,Crying Index,ECR-GO,NESSおよびPESSであった。なお,ACI-BとCrying Indexは邦訳を行った。共分散構造分析の結果,愛着傾向と泣きに対する動機づけは,「泣きを抑える能力」を低めるよう予測した。愛着傾向では,「親密性回避」が「泣きの困難さ」を高めるだけでなく,「泣きに対する嫌悪」を介して「泣きの困難さ」を高めるよう予測した。また愛着傾向にかかわらず,「泣きを抑える能力」は「泣きの困難さ」を高めるよう予測した。本研究を通して,これまでに経験的に議論されていた,泣きの抑制と愛着傾向について,実証的に検討することができた。