主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故の直後から我々は福島県内の低線量放射線汚染地域で暮らす母子の,放射線による健康被害に対する不安や恐怖に起因すると考えられる精神症状について調査を行ってきた。放射線不安や心理的ストレスは事故からの時間経過に伴う一定の低下がみられたが,他県群に比べて高い状況は続き,心理的影響の長期化が懸念される(cf. Tsutsui et al., 2020)。ところで,ヒトは健康を害する可能性のある毒物や化学物質から行動的に忌避するメカニズムを生得的に有する可能性が示唆されている(Schaller & Duncan, 2007)。この仕組みは行動免疫システムとよばれ,福島事故による精神影響が長期化する原因の一つとの指摘がある(筒井,2019)。本研究では,チェルノブイリ原発事故の被災者を対象に事故後の精神影響と行動免疫システムとの関連性について調べた。分析の結果,チェルノブイリ被災者は福島事故の被災者と同様,感染脆弱傾向が高い場合に放射能汚染に対するリスク認知が上昇し,その結果として放射線不安やストレスなど精神症状が上昇することがわかった。