主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
他者の顔表情を認知する際,認知者自身の表情が認知結果に影響を与えるという表情フィードバック仮説が知られているが,その神経基盤は明らかではない。一つの可能性として,三叉神経を通じて中枢にフィードバックされる表情筋や皮膚からの求心性情報が,他者表情認知に影響するという説があるが,これを支持する結果は少ない。そこで本研究では,感覚閾値下(閾下)の微弱な電気による皮膚上から表情筋への刺激が,他者の表情認知に与える影響について初期検討を行った。実験では,被験者に対して,画面上に短時間(50 ms)提示された顔画像の表情が快または不快のどちらを示しているかについて二肢強制選択を行わせた。この課題中に,被験者の両頬に閾下の電気刺激を印加条件と印加なし条件を用意し,評定結果を比較した。その結果,電気刺激の印加条件では,快と評定した割合が印加なし条件よりも有意に高かった。この結果は,表情筋に対する閾下の電気刺激が他者表情認知に影響を与える可能性を示しており,他者の感情認知において,表情筋から中枢へフィードバックされる求心性情報が関与している説を支持する結果となった。