日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
セッションID: PM-018
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13.情動・動機づけ
流涙文脈が流涙者の自己評価に及ぼす影響審美的な体験の流涙の探索的検討
*井関 彩乃野村 理朗
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抄録

流涙行動は年齢とともに抑制され,その源泉となる出来事は多様化する(Vingerhoets, 2013)。本研究では,映画や音楽など琴線に触れる出来事から生じる「審美的体験の流涙(aesthetic crying)」に着目した。従来の研究で検討されてきた失敗や失恋などのネガティブな文脈と比較して,審美的体験に関わる流涙は,否定的な自己評価を喚起することがなく,流涙への抵抗感は低いと仮説を立て,web調査を実施した。成人84名(男性42名,女性42名,平均年齢39.35歳,SD=8.37)分の回答を解析した結果,審美的文脈では「感動」が流涙に伴うこと,また,4つの社会的状況(一人,家族,友人,他人)において,「無力感」,「みじめさ」,「自己嫌悪感」といった否定的自己評価がネガティブな文脈と比較して有意に低く,評価懸念と関する「恥ずかしさ」でも同様の結果が得られた。また,審美的文脈では流涙への抵抗感も低かった。以上のように,審美的文脈の流涙を検討することで,ネガティブなそれと異なる流涙効果(肯定的な印象やストレス緩和)が明らかになるとともに,その応用に向けた基礎知見の蓄積も期待される。

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