抄録
本研究の目的は,人口28,770人の比較的小規模な都市である北海道深川市の産業連関表の作成手順・手法を平易に取りまとめ,市町村産業連関表の作成事例を示すことである. 主要な研究成果は,次の2点である. 1)データ制約のある市町村における産業連関表の作成事例として,深川市産業連関表の作成における一連の手順・手法を生産額推計シート表を用いて提示する. 2)深川市産業連関表より見いだすことができた地域経済活性化策とは,次のとおりである.医療関連産業の経済活動は,地域内に経済効果を及ぼす影響力は小さく,周囲の経済要因から受ける影響の度合は小さい.これにもかかわらず,大きな生産額を生み出している.これらの特徴・与件より,医療関連産業には,独立的,自立可能な産業特質を有しており,地域の雇用を提供する産業であること,さらには,景気変動や外部的経済要因に左右されない中立性があることが明らかになった.医療福祉都市を充実させようとする地域政策には,地域の経済基盤の土台を構築する効果を含んでいると考えられる.