2021 年 74 巻 26 号 p. 85-107
人工知能(AI)に関連する発明は,その主題が本質的にソフトウェアで実現されるものが多い。ソフトウェア発明の取り扱いは各国で異なり,日本で特許となる権利範囲が必ずしも米国や欧州で特許されるとは限らない。本論文では,総論として米国特許法及び欧州特許条約の下におけるソフトウェア発明の特許性及び開示要件の判例,審決例,及び米国特許商標庁(USPTO)及び欧州特許庁(EPO)における審査基準を解説する。また,日本特許庁(JPO)主催のシンポジウムで使われた事例を通してUSPTO及びEPOの審査実務及び特許性判断結果のJPOとの相違を明らかにする。最後に,日本がより緩やかな基準を採用する理由や,この緩やかな基準が日本企業の国際特許取得戦略に与える影響を考察し,国際調和の必要性を検討する。