別冊パテント
Online ISSN : 2436-5858
データの利用と実施行為の観点から見たデータ駆動型人工知能の知的財産保護
酒井 將行
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 75 巻 27 号 p. 57-97

詳細
抄録

 工業化社会・情報化社会の次に来るべきソサイエティー5.0 と呼ばれる社会では,いわゆる「データ駆動型人工知能」技術が,その中核の一つを担うものと想定される。ここで,日本の特許制度において,データ駆動型人工知能の知的財産保護という観点で,「学習済みモデル」そのものをプログラムの発明として特許の対象とする,との運用がいち早く採用されている点については,技術開発を行う主体にとっては,大きなメリットと考える。いわゆる「プログラムの特許権」については,侵害摘発の困難性という点から,課題が指摘されることが多いものの,筆者としては,これは,一つには,発明をいかに把握して,クレームドラフトにつなげられるのか,という側面もあるものと考える。しかも,「学習済みモデル」自体が特許適格性を有していることは,クレームドラフトの自由度ないしは保護範囲の拡大という観点から,極めて重要と考える。一方で,「データ駆動型人工知能」のような技術によるサービス提供という観点からは,特許法上の実施行為の概念についての再検討も必要と考える。もっとも,実は,「データ駆動型人工知能」を知的財産権で保護することにより,産業の発達を図る,という観点からは,筆者としては,特に,オープンに学習用データとして利用可能なデータについて,何らかの新たな知的財産権としての保護の必要性を感じており,立法論とはなるものの,その可能性について提案する。

著者関連情報
© 2022 日本弁理士会
前の記事 次の記事
feedback
Top