2025 年 78 巻 31 号 p. 163-178
標準必須特許(SEP)に関しては、最近も、欧州、米国、中国、インド等で訴訟が提起されている。また、EU(欧州連合)では欧州委員会の提案に係るSEP規則案が激しい議論を呼んでおり、さらにWTO(世界貿易機関)の紛争解決手続では、EUが中国のSEP関連措置の協定整合性を争う紛争につきパネル審議が行われているなど、国家や地域共同体のレベルでも、様々な動きが進行中である。我が国でも、アップル対サムスン事件の知財高裁判決(2014年)以降目立った判決は出ていないものの、産業界のSEP問題に対する関心は高い。 SEP紛争に関連する法的論点は数多いが、近年は、紛争に関与する業種の拡大等によって新しい問題も生じている。それらは、SEP特有の問題という側面とともに、特許制度一般に関係する問題という側面も持つ。本稿では、近年争点となっている論点のうち、ライセンスのあり方(消尽問題との関係を含む。)と紛争解決制度のあり方に焦点を当てて、検討する。