抄録
本研究は、アパタイト形成過程における焼結水酸アパタイトの表面構造変化をTEM=EDXにより調べ、表面電位変化をレーザーゼータ電位計により調べた。TEM-EDXにより、擬似体液中で焼結水酸アパタイトはその表面に先ずCaに富むリン酸カルシウムを形成した後に、Ca/P比の低いアモルファスリン酸カルシウムを形成し、同リン酸カルシウムをアパタイトに転化させる形成を経て、骨類似アパタイトを形成することがわかった。ゼータ電位測定結果によれば、HA表面は、SBF浸漬直後大きく負に帯電していたが、徐々にその電位を増加させ、やがて正に帯電して最大値をとった後、その電位を減少させ、再び負に帯電した。以上の結果から、結果擬似体液浸漬初期にCaに富むリン酸カルシウムが形成したのは、負に帯電したHA-800表面が液中の正に帯電したカルシウムイオンを取り込んだためであり、次に、Ca/P比の低いアモルファスリン酸カルシウムの形成は、正に帯電したCaに富むリン酸カルシウムが負に帯電した液中のリン酸イオンを取り込んだためであることが分かる。その後、同リン酸カルシウムがCa/P比を増加させ、骨類似アパタイトに転化したのは、後者が熱力学的により安定したためである。