抄録
Ba(CH3COO)2, Ti(OC2H5)4を出発原料として作製したポリビニルピロリドン(PVP)を含有するゾル及び含有しないゾルをSiウエハ上に滴下し, それぞれについて, 5℃min-1で室温から500℃までの昇温, 室温までの降温における膜応力のその場測定を行った。PVPを含有しないゾルから作製した膜においては, 引張応力は温度上昇とともに減少し, 250℃を境に圧縮応力に転じた。約330℃で圧縮応力は引張応力に転じ, 引張応力は増大し400℃で約200MPaとなった。一方, PVPを含有するゾルから作製した膜において, 引張応力は250℃まで若干減少し, 圧縮応力に転ずることなく250℃以上の温度で温度上昇とともに増大した。最大引張応力は約90MPaで, PVPを含有しないゾルから作製した膜に比べ小さい値になった。いずれの膜においても, 引張応力が最大値を示した後, 温度上昇とともに応力が減少する傾向が見られた。降温過程では, PVPを含有しないゾルから作製した膜では, 400℃まで一旦応力が減少し, それ以降応力が急激に増大し, 室温での残留応力は約350MPaとなった。一方, PVPを含有するゾルから作製した膜の応力は, 270℃付近まで緩やかに増大し, その後若干減少し, 室温での残留応力は約90MPaあった。