抄録
我々は分子軌道法計算による安定リン酸カルシウムクラスターの探索を行っている。今回[Ca3(PO4)2]n、 n=3について検討した。最適化の結果、ポテンシャルエネルギー表面上でエネルギー極小値をとる24種類の異性体が得られた。最もエネルギー値の低い異性体はCs, 、S6、C2の3種類で、エネルギー値は0.0、3.1、4.3kcal/molであった。これらエネルギー差は計算精度から考えて誤差範囲であった。すなわちS6異性体は他の2つに比べて格段に対称性が高いにもかかわらず、エネルギー値が低い安定な構造である。またS6異性体はクラスター成長モデルで成長単元として提案された二種類(右手系と左手系)のC3クラスターの平均構造に相当していた。