抄録
最近、我々はOH-イオンに比較的敏感なラマン散乱法により、水酸アパタイト中のOH-イオンの欠陥に関する有用な知見を得ている。本研究では、ラマン散乱法よりも局所的な構造に敏感な固体プロトン核磁気共鳴法を用いて、大気中200∼1200℃の各温度で加熱処理を行った水酸アパタイトに対して、水素原子周囲の欠陥構造の観察を行った。水酸基に帰属される0ppm付近のピークの積分強度は、温度の上昇に伴い800℃付近まではほぼ一定であり、それ以上の温度で急激に減少した。また、800℃以上の温度でピークは低磁場側へシフトし、半値幅は増加した。これらの結果は、800℃以上での脱水に伴いOH-サイトに欠陥が導入され、プロトン周囲の構造が乱れたことを示していると考えられる。