抄録
10,12-ペンタコサジイン酸(PDA)の重合膜を炭酸カルシウムの過飽和水溶液に浸漬した。水溶液には、Ca^<2+>の10倍量のMg^<2+>を添加した。また、Sr^<2+>を加えた水溶液にも膜を浸漬した。Sr^<2+>を含まない炭酸カルシウム水溶液に浸漬したところ、重合膜上に紡錘型の析出物が形成された。この析出物はマグネシウムを含むカルサイト単結晶であった。その c 軸は紡錘型結晶の長軸と平行であり、PDA膜の重合方向に垂直であった。Sr^<2+>を含む水溶液の場合、基板上に針状結晶のアラゴナイトが形成された。無機・有機界面におけるPDA膜のカルボキシル基と結晶中のカルシウム・炭酸イオンのコンフォメーションがカルサイト単結晶の方位を規定したと考えられる。