抄録
現在,体内で次第に分解吸収され新生骨に置換される生体吸収性の骨充填材として,リン酸三カルシウム (TCP) が整形外科等の分野で臨床使用されている。高温型のα相(α-TCP)は1100℃以上で熱力学的に安定であるため, 通常の焼結法で容易に合成できる。しかし, α-TCPの溶解度はβ-TCPよりも大きいため, 骨が完全に修復されないうちに,吸収され得る問題がある。演者らは,これまでにα-TCP 多孔体を作製し,これをヒドロキシプロピルセルロースで被覆すれば,骨欠損部における吸収性を制御できることを報告した。本研究では,α-TCP 多孔体を絹蛋白質の一つであるセリシンで被覆し,家兎脛骨内での吸収性を調べた。その結果,セリシンを被覆したα-TCPを埋入した脛骨では, 埋入部位の皮質骨は骨組織で完全に修復された。