抄録
炭化ケイ素(SiC)は、高硬度、高強度、高熱伝導率、耐酸化性に優れ、大きいバンドギャップを持つという特性を有し、切削工具、研磨材、耐熱構造材、高温半導体などとして広く利用されている。現在、SiC粉末の工業的な製法は主にAcheson法(電気抵抗法)が用いられている。その過程においては、膨大なエネルギーが消費され、高い製造コストや環境への負荷が問題となっている。使用済みのSiウエハー研磨用SiC粉末には、主成分のSiC以外に、Siの研磨屑、潤滑剤に起因する有機不純物、そして少量のFeが含まれている。研磨粉としての再利用は困難であるため、使用済みSiCの多くが廃棄されているのが現状である。本研究では、使用済みSiC粉末中に含まれるSiを利用し、窒素雰囲気中の熱処理によって、Si3N4ウィスカーとSiCの複合粉末の合成に成功した。さらにSi3N4ウィスカーが酸化鉄を触媒として、VLSメカニズムに基づき生成したことを明らかにした。熱処理条件、粉砕、焼結助剤の混合方法、原料粉末の調整、ホットプレスの処理条件を最適化することにより、強度と靱性がともに向上したSiC再生焼結体が得られた。複合粉末に3wt%のAl2O3と1.5wt%のY2O3を助剤として添加し、1900oC、2hで焼結した試料の強度と靱性はそれぞれ626(48) MPaと3.9(0.1) MPa.m1/2と測定され、単一なSiC再生焼結体より大きく向上した。作製されたSiC焼結体は耐火材、高温構造材、加熱素子への応用が可能である。使用済みSiC粉末を利用した低コストな焼結体の再生プロセスは、省エネ的な手法で環境負荷の低減に繋げることが期待されている。