抄録
スパッタ法を用いて作製される亜鉛フェライト薄膜は室温において高い磁化を示し、その原因は非平衡蒸着プロセスにより引き起こされた亜鉛フェライト中のカチオンランダム配列に基づくフェリ磁性であることを演者らは先に明らかにした。本研究ではシリカ基板上に作製した亜鉛フェライト薄膜試料に熱処理を施し、そのナノ構造と磁気的性質の変化を調べた。300℃以下の低温における熱処理では結晶性の向上と高密度化に伴うイオン間距離の減少により超交換相互作用が強められ、室温における磁化は増加した。一方、400℃以上の高温の熱処理を施すとカチオンが熱力学的に安定なサイトへ再配列することで、フェリ磁性から反強磁性への急激な磁化の減少を伴う磁性変化が起こることがわかった。