抄録
α-Fe2O3は比較的小さいバンドギャップを有しているが、吸光係数およびキャリア易動度が小さいため、大きい量子収率が得られない。WO3はTiO2と並んで光触媒活性をもつことが知られており、W6+はFe3+よりも価数が大きいため、α-Fe2O3にドープすることによって、ドナー密度が増大し、可視域での量子収率が増大する可能性がある。本研究では、バンド構造の観点から、2つの異なるn型半導体をゾル-ゲル法によって積層し、半導体接合することによって、Fe2O3-WO3系積層膜を作製し、光照射により生成した電子・正孔の移動が容易になり、量子収率が増大することを期待した。また、積層膜中に生じる膜厚方向での組成傾斜が光触媒活性に及ぼす効果も調べた。