抄録
シリコーンゴムは、カテーテル、腹膜透析や人工呼吸器の経皮デバイスとして実用化されているが、生体親和性に乏しく、皮膚とはほとんど接着しないので、長期間経過後には生体とシリコーンゴムの境界面から皮膚組織が体内に陥入し、その陥入部位を通して細菌が感染することが問題となっている。一方、アパタイトは良好な生体親和性を示すことが知られている。従って、シリコーンゴムの表面にアパタイトを形成させれば、その生体親和性を向上させ得ると期待される。クラスターイオンは数個~数万個から成る塊状原子(あるいは分子)集団であり、多体衝突効果、高密度照射効果、低エネルギー照射効果、超平坦化効果など、クラスターイオン特有の照射効果を有する。そこで、本研究では、シリコーンゴムに種々のクラスターイオンビームを照射し、その表面構造変化および擬似体液(SBF)中におけるアパタイト形成能を調べた。