抄録
骨再生医療での応用を目的とした炭酸カルシウム/ポリ乳酸複合膜を作製した。炭酸カルシウムには、vaterite、calcite、aragoniteの3種類の結晶形が存在し、安定性、溶解性などが異なる。それぞれの炭酸カルシウムを用いて作製した複合膜について、細胞親和性等の評価を行った。骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1細胞)を用いた培養試験の結果、どの複合膜も細胞毒性を示さず、順調に増殖した。結晶形の違いによる増殖性の影響は見られなかった。微量のシリコンイオン種は、骨芽細胞を活性化させ、その増殖性を促進するとの報告がある。そこでシリコンを含有したvateriteを用いてポリ乳酸複合膜を作製し、同様に培養実験を行った。シリコンを含有しない複合膜と比較したところ、シリコンを含有した複合膜上において増殖が促進されることがわかった。