抄録
中温作動型SOFCの実現へ向け、新規電解質ランタンシリケートの緻密薄膜化を行った。具体的にはゾルーゲル法を適用し、ニッケル、あるいはステンレス基板上に望みの組成を持つランタンシリケート薄膜の形成を行った。ゾル液のコーティングは10回行い、最終的に1000度で焼成することで緻密膜の作製が可能となった。薄膜の導電率を測ったところ、バルクの活性化エネルギーとほぼ同等の値を示したことから目的の組成をもつ膜が形成できていることが分かった。また導電率はバルクのものを上回る値(600度で0.016 Scm-1)を示した。バルク導電率を上回った理由は現時点では不明であるが、一つの可能性として、導電性に異方性をもつ本材料の性質から考え、優位な導電パスのある方向にある程度優先的に配向して膜成長が起こったため、平均導電率の得られるバルクに比べて高い値を示したためと考えることができる。さらに実際の燃料電池への適用を目指し、多孔質金属支持体への膜成長についても検討し、多孔質ステンレス管の上に緻密膜の形成を行う手法を開発した。特性の評価はまだ行えていないが、中温作動燃料電池として今後高出力が得られることが期待される。