抄録
Bi2O3、Sb2O3などを少量(約5mol%)添加したZnO系高電圧バリスターの交流電気伝導特性(@50Hz)について述べる。試料の厚み方向に交流電圧を印加して得た電流応答波形を、移相器と差動アンプを用いて、試料の電気容量と電気抵抗による線形な電流成分(Linear)と、バリスター特有の非線形な電流成分(Nonlinear)に分離した。非線形な電流は特定の電圧 (バリスタ電圧:VB)以上で急増が見られる。非線形な電流を室温から120℃の温度範囲で測定し、アレニウス・プロットによって活性化エネルギー(Ea)を評価した。
Eaの振舞いは低電圧側で概ね平坦であり、高電圧側では昇圧に伴って急減少した。高電圧側のEaにおける負の電圧依存性は、電流経路を横切る電位障壁(ダブル・ショットキー・バリヤ)の印加電圧による降伏現象に対応すると思われる。高電圧側のEaを電圧ゼロに外挿した値は約4eVであり、VBと試料厚みおよびZnO結晶の粒径から求めた、一粒界当たりのバリスタ電圧に相当する電位ポテンシャルエネルギーに凡そ一致した。以上から、高電圧側から外挿で求めたEaがZnO結晶間の薄い粒界のバリヤ高さであると考えられる。一方、低電圧側の平坦なEaは約0.2eVであり、その値が印加電圧に依存しないことと、その大きさから3重点近傍など厚い粒界内の活性化エネルギーに対応していると推察される。