抄録
本研究では,酸処理を行い表面にカルボキシル基を形成させたVGCFをマトリックス中で均質に分散させることによって,SiC複合焼結体の破壊靭性がどの程度向上するか,微細構造と関係づけて検討を行った。酸処理VGCFは,VGCFを濃硫酸と濃硝酸の混液に懸濁し,加熱還流して得た。SiC粉体に対して8 mass% Al4C3と2 mass% B4Cの焼結助剤と0~8 mass% VGCFを混合し,成形したのち,1800℃で1 h, 62 MPaの圧力でホットプレスした。酸処理したVGCFを4 mass%添加したSiC複合焼結体の相対密度と破壊靭性はそれぞれ99.0%および5.7 MPam1/2となり,未処理のVGCFを添加した場合よりも高い値を示した。このVGCF添加SiC複合焼結体は未処理の場合よりも,プルアウトの長さが短くなることが分かった。以上の結果から,酸処理したVGCFを添加することによってSiC複合焼結体の相対密度と破壊靭性が向上することが分かった。