抄録
酸化亜鉛の酸素欠陥に関する研究をセラミックスを用いて行った。試料は無添加酸化亜鉛とマグネシウム添加セラミックスである。拡散実験は気相ー固相交換法で行い、拡散プロファイルと酸素トレーサーのイオン像を測定した。解析の結果、無添加試料で得られた酸素拡散係数はこれまでに報告されている無添加試料で最も小さい値を示した。マグネシウム添加試料では、添加量に比例して酸素拡散係数は大きくなった。温度依存性から、酸素拡散の活性化エネルギーは誤差の範囲で一致した。つまり、マグネシウムの添加は拡散メカニズムに影響を与えず、拡散に有効な欠陥量だけに影響を与えると言える。粒界拡散は、無添加系試料ではプロファイに濃度勾配が得られなかった。マグネシウム添加試料では勾配が観察されたが、その濃度は小さく、粒界拡散の領域は狭い。酸素トレーサーのイオンイメージから、粒界拡散の異方性を反映した強度分布が得られた。粒界拡散はマグネシウム添加によって抑制されている可能性がある。