抄録
固体酸化物型燃料電池(solid oxide fuel cell:SOFC)の適用を拡大するために、作動温度の低温化が求められている。その際、固体電解質層の厚さは薄い方が望ましく、燃料極アノードを支持基材とした燃料極支持型セルが有効とされている。また、固体電解質として、高い酸素イオン伝導性を有するLaGaO3系の材料が注目されている。しかし、LaGaO3系の材料は電極材料と反応して高抵抗層を生じやすい欠点が指摘されており、LaGaO3系材料を用いたセル構築においては、適切な緩衝層の形成を考慮する必要がある。電気泳動堆積(electrophoretic deposition:EPD)法は、帯電粒子の電気泳動現象と凝集堆積現象に基づくセラミックス成形法で、電圧や通電時間の制御で膜厚の制御された粒子堆積層を容易に形成できる特長を有するため、SOFCのセル作製に用いることで、アノード上に膜厚の制御された均一な電解質層や緩衝層の形成が期待できる。そこで本研究では、LaGaO3系固体電解質を用いたセルで、緩衝層の有無が発電特性に及ぼす影響について考察した。