抄録
本研究では、+3価の原子価と12配位を取り得るSmに着目し、Sm3+がAサイトを部分的に占有する(Bi1-xSmx)(Ni0.5Ti0.5)O3ペロブスカイト構造強誘電体薄膜をスパッタ法により作製し、その成長機構を検討した。Sm置換量がx = 0-0.2ではペロブスカイト相は確認されなかったが、x = 0.5で二層のペロブスカイト相とその層間のアモルファス中にc軸配向ナノ結晶核(幅3 nm×高さ10 nm)の生成を見出した。x = 0.6ではc軸配向単斜晶系ペロブスカイト単相膜が得られた。以上より、ペロブスカイト構造の伸長方向は酸素拡散方向に平行であることを見出し、Smと酸素の結合が薄膜の結晶化と配向の駆動力となっている可能性が考えられる。