抄録
BaTiO3単結晶のハイブリッドな野フラクトグラフィーを行った。(100)の破面はマクロには平坦なへき開破壊であったが、SPMの形状像から断面プロファイルから高さ0.2~0.5nm、幅100nm程度の規則的なステップが観察された。また、PFM像では信号はほとんど0であったが、SNDM像では、破面に上向きの分極を示す強い応答が縞状に観察された。PFMよりもSNDMの方がより表面に近い領域からの情報が得られることから、BaTiO3単結晶の破面近傍でのみ特異な分極構造を形成していることがわかった。また、(110)の破面でも同様の強い分極が確認されたが、試料Aとは異なるドメイン構造が確認された。ドメインウォールの方向を考慮すると、破面の極近傍のこれらのドメインは正方晶のものではなく、他の低温相が存在していることが示唆された。このような破壊に伴う特異なドメイン構造の形成は、き裂先端の応力集中による局所的なドメインスイッチングなどを含めたBaTiO3に特有の破壊の素過程に起因するものであると考えられる。