抄録
各種セラミックスに鋼鉄製の高速飛翔体をほぼ音速で衝突させ,衝突時の破壊挙動,及び飛翔体の有するエネルギーの吸収能とセラミックスの機械的性質の関係について検討を行った. 今回用いたセラミックスではいずれの試料においても飛翔体が破壊した.衝突後のセラミックス試験片では飛翔体と衝突した位置を起点にコーン状亀裂とラジアル亀裂が発生した.破壊靭性が低い炭化ホウ素及びムライトではコーン状亀裂により除去された体積が大きいのに対して,破壊靭性値が高い窒化ケイ素ではその体積が小さかった.また,部分安定化ジルコニアはコーン状の亀裂は認められなかった.これらの傾向より,破壊靭性値の高い材料は衝突時の破壊損傷が小さいのに対して,破壊靭性値の低い炭化ホウ素やムライトは高靭性を示す材料と比較して大きく損傷することがわかった.また,この結果から,破壊靭性値の低い炭化ホウ素やムライトは衝突時に飛翔体の有するエネルギーをよく吸収する可能性が示唆された.