抄録
(Na,K)NbO3系無鉛圧電材料は比較的優れた圧電性を示す。しかし本材料は圧電性および強誘電性が不安定との問題が指摘されている。この原因として、試料内部のイオン欠陥を起点とした脱分極現象が生じていることが予想される。そこで本研究では、分極処理したNa0.5K0.5NbO3セラミックスと単結晶の熱刺激電流を測定し、加熱時に生じる脱分極現象を調べた。その結果、相転移温度近傍における熱刺激電流パターンにおいて、強誘電性ドメイン構造変化に対応する急峻なピークが観察された。一方、セラミックスの電流パターンでは約280および370 oCを中心とする散漫な電流パターンも観察された。この異常電流はセラミックス試料で特に顕著であり、粒界近傍に存在するイオン欠陥に蓄積された電荷の熱放出現象であると推測される。