抄録
近年、電磁波両立性への関心の高まりから、種々の電波吸収体が開発されている。市場に流通している電波吸収体は、その背面に金属反射板を配置したインピーダンス整合型のものが主流であるが、その吸収周波数帯域は狭く、今後普及が見込まれる高速無線通信(UWB、WiMAX等)への対応は困難と考えられる。本研究で、樹脂成形体中の磁性粉濃度を電波の侵入方向に対して傾斜化したところ、吸収体表面では誘電率の低い樹脂濃度が高くなり、インピーダンス整合が改善されることで、表面での不要反射が抑制されること、また、吸収体内部に侵入した電波は、反射板近傍で濃縮された磁性粉の損失により効率良く熱エネルギーに変換されることで、広帯域での電波吸収が可能となることを見い出した。