抄録
α-リン酸三カルシウム(α-TCP)はリン酸カルシウムペースト(CPC)の主成分として用いられている。本研究ではCPCの液体成分に含まれているコハク酸の分子構造に着目し、類似した分子構造を持つグルタミン酸、フマル酸およびマレイン酸を共存させ、カルボン酸の分子構造および濃度がα-TCPの転化反応に及ぼす影響を調べた。その結果、転化反応速度はカルボン酸の種類に依存せず10mMまでは上昇し、それ以上では低下することが分かった。この原因は10mMまではカルボン酸がカルシウムイオンをキレートし、α-TCPの溶解を促進したためであると考えられる。一方、それ以上ではキレートによってHApの析出に有効なカルシウム濃度が低下したためであると考えられる。