材料と環境
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論文
アルカリシリカ反応による鉄筋の破断機構
樽井 敏三鳥居 和之
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2010 年 59 巻 4 号 p. 143-150

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抄録
ASRによる鉄筋の破断機構を明確にするために,ASRによって破断した鉄筋の詳細な調査を行うとともに鉄筋の遅れ破壊特性,鉄筋の曲げ加工時の応力解析などを調査した.鉄筋のマクロ的な破断形態は,曲げ加工内面側の節付け根部から一次き裂が発生し,曲げ外面側に向かって二次,三次き裂が発生,伝ぱしていた.一次き裂は延性破面,二次,三次き裂はへき開破面であり,擬へき開破面は観察されなかった.また,鉄筋の表面疵,鉄筋内部には粗大な非金属介在物やボイドが散見され,鉄筋健全部のシャルピー吸収エネルギーは低かった.鉄筋曲げ加工部は,曲げ加工によるひずみ時効により表層部硬さが上昇していた.鉄筋の曲げ加工後の残留応力は曲げ加工内面側で引張残留応力であり,特に節付け根部の残留応力が高いことをFEM解析で確認した.定荷重の遅れ破壊試験では,切欠き試験片に0.97 ppmの水素をチャージしても,遅れ破壊が発生しなかった.ASRによる鉄筋破断は,鉄筋の曲げ加工によるひずみ時効硬化および粗大な非金属介在物やボイドに起因する破壊靭性値の低下と曲げ加工による引張残留応力およびASRによる鉄筋への引張応力の増加の要因によって,脆性破壊したものと考えられた.また,脆性破壊説で,二次,三次き裂の発生および伝ぱ挙動の説明が可能であった.
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© 2010 公益社団法人 腐食防食学会
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