抄録
陶磁器の釉薬を発色させる機構として、珪酸塩ガラス中に銅や銀などの金属ナノ粒子を分散させ、金属粒子表面で生じるプラズモン共鳴現象によって鮮やかな発色を得ていることが、最近の研究で明らかになってきた。この発色機構では釉薬の色調は金属ナノ粒子のサイズに関係すると推測されるが、この課題について研究した例はまだ多くない。今回、電子分光が可能な透過型電子顕微鏡を使用して、赤く発色した辰砂釉中の金属銅ナノ粒子を観察し、プラズモン吸収領域にエネルギーフィルターを設定することで、表面プラズモン共鳴を生じている粒子だけを強調して観察・撮影することが可能であった。