抄録
電子スヒ゜ン共鳴(ESR)は、物質中に存在する希土類と遷移金属イオンの有する不対電子(スヒ゜ン)の角運動量変化をZeeman効果を基本にした磁気共鳴により検出する方法である。ESRを用い、共鳴磁場値とシク゛ナルの分裂形態(原子核とスヒ゜ンの相互作用、スヒ゜ン間の相互作用など)を観察することで、希土類と遷移金属イオンの価数を同定でき、かつ、磁気共鳴によるμ波エネルキ゛-吸収量の定量評価を通して、イオン個数を価数別に分別できる。誘電体や半導体の電子材料セラミックスの機能発現において、粒界の役割は大きく、局所組成、キャリア移動に対する障壁など、多くの機能発現メカニスムの考察が行われてきたが、これまでの研究では発現機構について充分に検証されていない。本報告では、BaTiO3系の正のサーミスタ特性の発現機構を解明するべく、粒内、粒界における添加イオン成分の価数とその存在状態について、ESRと化学エッチンク゛を用いて、定性的、かつ、定量的に検討した結果について述べる。