抄録
Pb(Zr0.53Ti0.47)O3(以下PZT)薄膜は優れた圧電特性を有することから、各種センサ、アクチュエータへ利用されている。PZTは、その配向方向で物理特性が異なり、c軸配向制御を実現することで高い圧電性を示す。しかし、CSD法においてc軸配向制御が実現できている例は極めて少ない。そこで、新たにLaNiO3(以下LNO)シード層と、基板との熱膨張係数(以下CTE)の差を利用した圧縮応力誘起による結晶配向制御技術を開発した。Siおよびステンレス基板上にPZT薄膜素子の作製と、結晶配向性および電気特性の評価を行い、CTEと特性の関係を検討した。作製したPZT薄膜は、基板種に関わらず、すべて(001)/(100)方向に選択配向しており、CTEの大きい基板上に形成したPZT薄膜の方が、ピーク位置が低角側にシフトしていることがわかった。これは、基板とPZT薄膜のCTEの差により生じる熱応力により、CTEの大きい基板の方が圧縮方向に大きな応力を受け、c軸長が伸びたためと考えられる。一方、比誘電率については、CTEの大きい基板の方が小さい値を示すことがわかった。さらに、SS基板上のPZT薄膜については、高い分極特性を得ることができた。