抄録
我々はこれまでに RE[FeIII(CN)6]•nH2O (REは希土類元素)多核錯体を合成し, その熱分解生成物がきわめて均質性の優れたペロブスカイト型酸化物となることを報告してきた。この系のRE3+サイトに2価のSr2+を部分置換することができれば, 電気伝導性などが向上し, 様々な応用への展開が期待できる。しかし, Srを含むシアノ錯体の報告は無く, これまで2価のSrを置換することはきわめて困難であった。
今回, 新規の(NH4)2Sr[FeII(CN)6]多核錯体の合成に成功し, この錯体は合成時にRE[FeIII(CN)6]•nH2O多核錯体と共沈させることにより, RE-Sr-Fe系多核錯体を得ることが可能であることが明らかになった。本研究ではこの合成方法と熱分解生成物について報告する。得られた多核錯体について出発原料よりもSr比が大きく減少することがわかり, 熱分解生成物についても検討を行ったところきわめて均質にLaとSrが分散したペロブスカイト酸化物の生成が確認できた。