2008 年 11 巻 1 号 p. 004-016
少子高齢化が進展する中,我が国は団塊の世代の大量退職による労働力不足と技術の継承の懸念といういわゆる「2007年問題」に直面している.本稿は,こうした状況下において,運輸事業者における人材確保と技術の継承に対する認識と取り組みについて,全般的な状況と分野ごとの状況を概観するとともに,航空整備分野,鉄道分野,バス分野の事業者のアンケート調査とヒアリング調査を行い,現況をまとめたものである.その中で,分野により若干の差はあるものの各事業者とも労働力確保と技術の継承に関する問題を認識し,問題の回避に向けた対策を行っているという結果を示している.続いて,各分野を比較することで,分野を通じた課題を抽出している.そして,この結果を踏まえ,事業者の進めるべき施策や行政の方向性の足掛かりを示している.