抄録
本研究では,酸化鉄(Fe2O3)を添加したムライトに注目し,Fe2O3添加ムライトの焼結性及び微構造を評価した.Fe2O3無添加ムライトは,焼結温度が1600oCで開気孔率がおよそ8 %であったが,Fe2O3添加ムライトは,Fe2O3添加量が増加するにしたがって緻密化温度は低下し,焼結温度1600oCでは,Fe2O3添加量1 wt%で開気孔率が1%以下であった.また,Fe2O3添加量が11 wt%では,焼結温度1400oCで開気孔率1%以下となり緻密化した.Fe2O3添加ムライトの結晶相の同定及び格子定数を測定した結果,Fe化合物に帰属する回折線が認められなかったこととFe2O3無添加ムライトの格子定数よりも大きい値を示したことから,Feがムライト結晶構造内に固溶したことが示唆される.また,SEMにより微構造の観察を行った結果,Fe2O3無添加ムライトでは焼結温度が高くなるに従って緻密化は進行するが,粒成長はほとんど見られず,等軸状粒子で構成されていたが,Fe2O3添加ムライトでは,焼結温度が高くなるに従って緻密化が進行するとともに,ムライトの柱状組織が発達することが明らかとなった.