抄録
おもに骨置換材料として利用されているβ型リン酸三カルシウム(β-Ca3(PO4)2:β-TCP)は再骨折の危険性が問題点とされている.その解決策として,演者らの研究グループでは,β-TCPの結晶構造中に各種金属イオンを固溶させ,その機械的強度や熱安定性を向上させ,さらには溶解性をも制御できることを報告している.そこで本研究では,β-TCP中のPサイトにS6+イオンを6mol%一定添加し,CaサイトにMn2+イオンを0−9.09mol%と添加量を変化させたβ-TCPを作製し,その固溶メカニズムを検討することを目的とした.その結果,作製した試料はS6+イオンがβ-TCP構造中のP5+イオンに,Mn2+イオンがCa2+イオンに置換していることがわかった.