抄録
Na2Ti2As2Oをはじめとするチタンニクタイド酸化物は、Fig.1に示すようにNa層と[Ti2As2O]層が交互に積層したAnti-K2NiF4型構造をとる。この系は、チタンが正方格子(Ti2O面)を形成する点で銅酸化物超伝導体(CuO2面)と類似しているが、遷移金属の電子状態が、銅酸化物ではCu2+(d9)であるのに対し、Na2Ti2As2OではTi3+(d1)である。すなわち電子・ホールを逆にした対照的な系とみなせる。またこの系は低温で鉄砒素系超伝導体と同様に、SDW/CDW転移を起こすことが知られているため、鉄砒素系超伝導体との関連性も興味が持たれる。
本系は、その構造類似性の高さから、従来ペロブスカイト型化合物で用いられてきた様々な合成戦略が適用可能である。例えば、層間イオンの制御による物性制御は興味深い。今回我々は、Na層の代わりにBa層を含む新規化合物、BaTi2Sb2Oの合成に成功したので、その合成および物性を報告する。
BaTi2Sb2Oは、BaO, Ti, Sbを原料とし、グローブボックス内で混合、石英封入した後、1000℃で焼成することにより得た。X線構造解析の結果、Fig.2に示すように、Ba層と[Ti2Sb2O]層が交互に積層した構造をとり、格子定数はa = 4.111Å、c = 8.072Åであった。また磁化率測定からも同じ温度で異常が見られたことから、本系も類縁化合物と同様にこの温度でSDW/CDW転移を起こすと考えられる。詳細な構造、物性ついては当日発表する。