抄録
ペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3-δ (以下、LSMO) は金属-絶縁体相転移を示す。これは反強磁性絶縁体のLaMnO3にSr2+を固溶するとMn3+の一部がMn4+になり、MnとOの混成軌道を経由したMn3+からMn4+への電子遷移の発現による強磁性金属が現れる事に起因する。O2-を介したMnイオン間の電子遷移のしやすさを決めるMnとOの結合状態によって、相転移温度は大きく変化する。この性質を利用して人工衛星の表面にLSMO焼結体タイルを貼ることで、自己熱制御が可能となることが実証された。LSMO焼結体を薄膜化することで、軽量化や施工性向上等が期待されることから、我々は自己熱制御材料に適したLSMO薄膜の作製を目指した研究を行なっている。本報告では、Mnの価数やMn-O-Mnの結合状態に影響を及ぼす酸素欠損量と残留応力が相転移温度に与える影響を評価し、室温付近に相転移温度を持つLSMO薄膜作製とその熱放射率測定について報告する。