抄録
貝殻真珠層は厚さ数百nmの多角形のアラゴナイトリッチなプレートがレンガ状に積層した構造を持ち、プレート間を有機物マトリックスが満たしている。その体積の95%以上がセラミックス相でありながら1%以上の引張破壊ひずみを示すことが知られている。
真珠層の変形はプレートの累積的なプルアウトによって生じるため、プレート界面のせん断すべり抵抗がマクロな特性に大きな影響を及ぼしている。すべり特性の発現には界面に存在する有機相が寄与していると考えられるが、その機構は完全には明らかでない。有機相中に存在するタンパク質は、外部負荷により分子内のドメイン構造や分子同士の架橋構造を可逆的に変化させることが報告されており、外部負荷による有機相の変化が真珠層のマクロな力学特性に影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこで本研究では、界面の有機相に繰返しの負荷を加えた際の真珠層の力学特性の変化をミクロ、マクロの両面から調べ、有機相の影響を明らかにすることを目的とした。