抄録
銅赤釉(辰砂釉)の安定した発色技術を確立するために、赤色発色した銅釉試料を用いてシンクロトロン光分析等を行い、釉中の銅の状態変化を調査し、発色メカニズムの解明を試みた。その結果、赤色発色した石灰釉試料では釉中に金属銅の存在が確認されたものの、赤色発色したバリウム釉試料のXRD,TEM測定結果では金属銅の存在が確認できなかった。また、XAFS測定結果では、銅赤釉中の銅の状態はCu2Oに近かった。以上の結果から銅赤釉の赤色発色の原因は、釉(ガラス)中の銅がCu2Oのような状態になっているためと考えられる。