抄録
切削工具材料にはWC-Co超硬合金が広く用いられてきた。近年、W資源の偏在や価格高騰が懸念されており、Ti(C, N)基サーメットを始めとする代替材料の開発が進められている。切削プロセスの高速化・乾式化に対応するため、従来の超硬工具にはTiNやAl2O3などのセラミックス系硬質コーティングが施されており、代替材料の実用化のためには、同様のコーティングをTi(C,N)基サーメット上へ作製する技術が必要である。化学気相析出(CVD)法は、密着性・機械的特性に優れた結晶質コーティングの作製法として広く利用されているが、通常の熱CVDではプロセス中の高温でTi(C,N)基サーメットが著しく熱劣化するため、新たな成膜プロセスが求められている。本研究では、レーザーCVD法を用いて、(Ti,Mo)(C,N)-Niサーメット上にAl2O3/ TiN積層コーティングを作製した。