抄録
BiNiO3は常温・常圧ではBi3+0.5Bi5+0.5Ni2+O3の酸化状態をもつ絶縁体だが、常温4 GPa以上の圧力で、金属のBi3+Ni3+O3の酸化状態へ電荷移動が起こり、同時に構造相転移を示す。Biを一部Laに置換したBi0.95La0.05NiO3では、常圧での昇温によってもこの電荷移動を伴った構造相転移が起きる。このときNi2+からNi3+への酸化に伴ってペロブスカイトの骨格を作るNi-O結合が収縮するため、体積が収縮する。興味深いことに、この相転移では低温相と高温相が互いの分率を変化させながら共存するため、室温から400Kの広い温度範囲に渡って-82 μK-1という巨大な熱膨張係数を持つなだらかな負の熱膨張が観測される。このような、熱力学的に許されない特異な挙動の発現には、ドメイン構造が重要な役割を果たしていると予想されるが、その機構は明らかにされていない。そこで本研究では透過型電子顕微鏡を用いて、そのドメイン構造を調べた。