抄録
高圧合成で得られるペロブスカイトBiNiO3は常圧ではBi3+0.5Bi5+0.5Ni2+O3という特徴的な価数状態をとるが、高温高圧ではBiとNiの間で価数移動が起こりBi3+Ni3+O3という価数状態をとる。このとき、Niの価数増大に伴ってペロブスカイト構造の骨格となっているNO6八面体のNi-O結合が収縮するため、約3%も体積が縮む。ビスマスを一部ランタノイドイオンで置換すると、(Bi,Ln)3+Ni3+O3の高温高圧相が安定化されるため、温度誘起の相転移に伴う巨大な負の熱膨張が常圧で観測される。この相転移は、温度に対して両相の分率を徐々に変化させながら進む。この特異的な振る舞いにより、相転移に伴う体積減少が、広い温度範囲で直線的な負の熱膨張として現れる。一例として、Bi0.95Eu0.05NiO3では、加熱過程では-200 ppm/K、冷却時は-90 ppm/Kの負の熱膨張挙動が観測された。