抄録
菱面体菱系Pb(Zr,Ti)O3 (PZT) 薄膜は正方晶系PZT薄膜に比べてわずかに残留分極が小さいが,非常に小さな抗電界を示す.しかし,菱面体晶系PZT薄膜の組織は明らかにされていない.本研究では,菱面体晶系 PZTエピタキシャル薄膜の組織・構造およびその膜厚増加による変化を透過電子顕微鏡 (TEM) により解析した.膜厚1m以下では,ドメインサイズが数100nmの非常に粗大なコラム状ドメインサイズを有していた.膜厚が1mを越えると,基板近傍においてコラム状ドメイン内にドメインサイズ10nmの微細なドメインが形成された.これの結果は,膜厚増加でドメインサイズが増加する正方晶系薄膜と対照的であった.