抄録
近年、社会構造の変化により働き方やライフコースは多様化し、それに伴って出産年齢の上昇や少子高齢化が進行している。こうした背景から、月経不順や不妊といった女性の生殖課題は、社会的に一層の重要性を増している。これらの課題は、加齢や食生活の乱れに加え、夜間光曝露・シフトワーク・睡眠不足によって起こる体内時計(概日時計)の乱れによっても、症状が進行・重症化する可能性が指摘されている。しかし、その病態基盤はほとんど明らかになっていない。本総説では、げっ歯類研究を中心に、概日時計中枢である視交叉上核からの時刻情報が女性の性周期や排卵タイミングをどのように制御するか、さらに女性ホルモンが中枢および末梢の時計に及ぼす影響について整理する。加えて、筆者らのウェアラブル端末を用いたヒト研究の知見も紹介し、体内時計と女性の生殖機能の関連を概説するとともに、基盤メカニズム解明に向けた今後の検証戦略と臨床応用の方向性を示す。