2025 年 27 巻 1 号 p. 73-76
本報告では,製薬業界における生成AIの活用可能性と課題を,生成AIを利用するユーザの視点から検討した。まず,プロンプトエンジニアリングやRAG(Retrieval-Augmented Generation)チューニングの基本的概念を概説し,生成AI出力の最適化に向けた手法を提示した。さらに,生成AIアプリケーション作成プラットフォーム「Dify」を用いて,FDAが示したCSA(Computer Software Assurance)の概念を題材としたデモンストレーションを通じて,プロンプトの工夫やRAGチューニングの有無が応答内容に及ぼす影響を比較・検証した。その結果,意図した応答を得るためには,プロンプトエンジニアリングの実施や,RAGチューニングによる知識補強が有効であることが示唆された。一方で,正確性・再現性・倫理的リスクなど,業務応用における課題も確認された。生成AIの適切な活用に向けては,利用ユーザ側の生成AI理解の促進に加えて,Human-in-the-Loopの考え方を含めた運用設計が重要であると考えられる。