抄録
Multi-detector CT(MDCT)のヘリカルスキャンから得られるvolume dataを用いたCT colonographyにより,小さな(径20mm以下)大腸浸潤癌11症例11病変の描出を試みた。術前大腸内視鏡検査終了後,腸管内に充分送気した後MDCT検査を施行した。得られたvolume dataからvolume rendering法により三次元画像を構築し,virtual endoscopy法により病変を表示し内視鏡像と比較した。内視鏡にて隆起性病変として認められたsm深部浸潤癌および進行癌9例はCT colonographyにて全例認識可能であった。臨床的に重要なこのような病変の診断におけるCT colonographyの可能性が示唆された。さらに三次元表示において病変の客観的な位置同定が可能であり,通常のCT検査と同じように周囲臓器への浸潤,リンパ節転移や遠隔転移の診断が可能なことを考えると,内視鏡検査と組み合わせることで質の高い術前診断が可能になると考えられた。一方描出不能な2症例があったことより,現状におけるCT colonographyの限界も同時に明らかとなった。しかし今後のCT装置や画像処理装置の進歩により,新しい大腸癌のスクリーニング法としての地位を築いていくものと考えられた。