抄録
大腸癌による腸管狭窄症例に対して外科的治療を行う場合,狭窄部より口側の病変の有無を術前に知ることは術式決定のためにきわめて重要である。しかし狭窄部を内視鏡が通過できない症例では,狭窄部より口側の病変を検索するための際だって有用な方法はこれまでなかった。今回著者らは,狭窄部を内視鏡が通過できない左側結腸から直腸の進行大腸癌5例に対して術前virtual endoscopy(以下,VE)を施行した。肛門から腫瘍による狭窄部までの腸管と脾彎曲部腸管から盲腸までの腸管内の描出は良好で,5症例すべてにおいて粗大病変はみられなかった。しかし腫瘍による狭窄部から脾彎曲部までの腸管は,腸管の拡張不足のため腸管内は描出されなかった。前投薬として腸管弛緩剤を投与しなかったため狭窄部から脾彎曲部までの腸管のスパスムを抑制できず,腸管が空気によって十分に拡張しないため,VEによる描出が不良になった。今後症例を重ねた検討が必要ではあるが,前処置および前投薬を適切に用いることによって,狭窄部より口側腸管の病変の検索が確実になり,腸管狭窄症例においてVEは有用な検査法に成りうるものと考えられた。